熱帯性感染症騒動記3:真実の痕跡を追い求めて

まだ続いています。

3月2日に病院で診療してもらった際、痛む関節の様子を見てみる必要があるだろうというので、予約が取れる6日にMRIを撮影することになった。
MRIでは全身をくまなく撮影できるわけではないようで、痛む箇所を一つ撮影するということになった。2日の時点では全身が同じように痛むので「どこか一箇所を選べ」と言われても選びようがなく、それならば左手で…といういかにも消極的な理由から左手のMRI撮影の予約を入れることになった。

撮影日を前にしてすでに症状は軽くなっていた。手が浮腫んで張る感じも解消し、関節の痛みもなくなりつつあった。撮影日前日にはすっかり痛みがない状態で、本当にMRIを撮影する必要があるのだろうか?と不安にもなったし、医師に申し訳ない気持ちにもなった。MRIは20分程度で終了した。この日は撮影だけなので放射線科で作業を終えたらそのまま帰るものと思いきや、撮影の途中で渡航医療センターのもう一人の医師が様子伺いに来てくれた。造影剤の注射を担当したのは前回の治療の際に同席していた研修医?らしき若い方だった。痛みがもうあまりないことを告げると「治癒することが一番大事ですから、それは本当に良かった」と笑顔で言ってくれた。

そして12日、前回採血した血液・尿の検査結果報告を聞きに行った。まず、MRIによる画像診断の後、関節の腫れの痕跡が見られることと水がたまっている様子が確認されたことが報告された。前回簡易キットでチクングニア熱の陽性反応が出たため、血清は国立感染研に送られて精査されたのだが、結局のところチクングニアウィルスは発見されなかったそうだ。可能性が高まったのは、パルボウィルス感染だという。つまりりんご病だったということらしい。
前回の簡易キットでチクングニアの陽性反応が出たのは、チクングニアとパルボウィルスの構造が類似するからだそうで、これを偽陽性というらしい。もう何が何だかわからない。さらに難しい説明は続く。
風疹のIgMはマイナス、膠原病、リウマチも問題なし。ただ、パルポウィルスのIgMが8.07と高いというので、再度採血をしてパルボウィルスに感染していたかどうかを検査するのだそうだ。

体調がすっかり良くなった今、原因ウィルスの特定については正直なところどうでもいいような気がするのだが、医師としてはそうはいかないようだ。今回の血液検査でパルボウィルス感染の痕跡が確定すれば通院も終了するようだが、そうでない場合は検査対象を広げて原因の追及作業がまだ続くのだろうか。医師が行う様々な検査(血液検査、画像検査など)は、あたりを付けた診断という<真実>を確認するための追認作業のようだ。ある<真実>が体内に残した痕跡を最新技術によって可視化させ、白日のもとに晒すことによって初めて病気は治癒されたと認識されるのだろうか。私の治癒のイメージとはだいぶ違って面白い。
というわけで、とりあえず熱帯性感染症騒動記はこれにて終了。

リンゴ病は発疹が収まった時点で感染力がなくなったと考えられるそうなので、現時点では私の中には感染させるほどのウィルスは存在しないと思われます。ご安心を。